もう食べる力は残っておらず、最期はかろうじて水に溶いたフスマを舐める程度でした。
そしてクローバーで学習したのでしょう。
そのフスマをシルとシェアしていたのです。
飼葉桶を倒すビッグ。
当たり前のように舐めるシル。
満足げに眺めるビッグ。
あの時間、きっとビッグは幸せだったに違いありません。
ビッグの愛の物語を描きたくても描けなかった理由のひとつはここにあります。
あまりにも深すぎて、あまりにも想像の範囲を越えすぎていて、簡単には伝えられないなと思ったから。
そしてあの頃の私は、馬にこんな愛情表現があるのかと驚かされるばかりだったのでした。