いつの頃からか、ビバはボスが誰かを叱ると自分も叱るようになりました。
誰にとってもなんのいいこともないこの悪癖。
それでもビバだけは、ボスが怒ってるから自分が正さなきゃ、と躍起になって叱られている対象を自分も叱りに行くのです。
もっともわかりやすいのが歩いているとき。
ボスがチラッとでも誰かのことを
「遅いよー」
と言おうものなら、至近距離にある場合鼻で小突きにいきます。
なので、ボスとビバ、わたしとシル、ハクのセットにして、なるべくビバと他のコたちは離すようにするのです。
先日、いつものように厩舎に戻る際、それぞれのロープを外した時のことです。
先にハクちゃんを離し、続いてシルを離したのです。
でもシルは相変わらずのんびりとした速度でタラタラと歩いていたので、後ろからビバを離したボスが、早く行くようシルに声をかけたのです。
それでもあちこちよそ見をしながら歩くシル。
そのまま歩かせておけばいずれ部屋に帰るので放っておけばいいものを、さらにボスが声をかけたのです。
そのときでした。
みたこともない速さでビバが走り出し、あっという間にシルの背後へ。
あまりの恐怖に半分腰が砕けるシル。
容赦なくシルのおしりへ振りかざされるビバの頭。
すべてが一瞬の出来事でした。
その直後、ボスの一喝によってビバはその場を離れましたが、そこには怯えきったシルの姿が。
隣に付き添いおしりにそっと手をやると、噛まれた形跡は一切なく、その代わりに大量のヨダレが付着していたのです。
そうなんです。
ビバは噛んだり蹴ったりしてシルを叱ろうとしたのではなく、全力で押してあげようとしたのでした。
最後の3行はほぼ妄想ですが、ビバがボスに代わって成敗しようしているのは間違いありません。
この先も、シルとハクちゃんはその犠牲者になるかと思うと、先が思いやられるのでした。