カテゴリ: 馬のヒエラルキー
ここ一番で鳴いてしまうので他の馬に気づかれるのです


冬の放牧は草も生えてなく、ウマコたちにとっての楽しみは運動会だけ。
と言ってもハクちゃんは運動会すら楽しみでもなんでもないため
冬の放牧はただの苦行らしいのです。
さて、放牧しているウマコたちを迎えに行くと、私たちの気配を察知したビバとシルが競い合うように出口に集まり待機しています。
ただ、ごくごくたまに、ビバもシルも気づかず、唯一ハクちゃんだけが気づいて奇跡の一番乗りをすることができることがあるのです。
そんな時のハクちゃんは、遠目に見てもとても嬉しそうで、待ちきれない様子でワクワクしているかのようで、私たちが到着するのを待てずに大きな声で鳴いてしまうのです。
すると、当然のようにビバとシルが気付きます。
ゆっくりゆっくり間を詰めながらこちらに近づいてくるのですが、依然ハクちゃんは二人(馬)の姿には気づいていない様子。
とうとう後ろにつかれ、案の定おしりをかじられ毛散らかされ、いつもの定位置(最も出口から遠く離れた場所)に追いやられ、安定のビリになってしまうのです。
鳴かなきゃいいのに鳴いてします。
これはハクちゃんの自分自身との戦いなのだと放っておいています。
ボス>ビバ ハクちゃんの頭の中にはこれしかないのかもしれません。。。
危うく馬社会の最下位にさせられるところだったある日の出来事




昨年の夏のこと。
営業が終わり、しばしの放牧タイムを終えてから、ビバとハクを一緒に馬小屋へ連れて帰ろうとしたある日の夕方のことです。
まずビバをリードで繋ぎ、その後ハクちゃんも繋いで歩き出したその時でした。
ハクがわずかにビバを追い抜いたのです。
その途端、電光石火の如く速さでビバの刃がハク目掛けて向けられました。
「あ!」と思った瞬間ハクが叫び声をあげて立ち上がり、その後のことはよく覚えていません。
気付いたらわたしは横たわり、ビバとハクに見下ろされていました。
わたしはハクのリードを離さなかったため、彼が立ち上がると同時に宙に浮き、そのまま落下したのです。
ここで慌てたらだめだと思い、何食わぬ顔で立ち上がり、「行こうか」と平常心を装いながら声をかけて歩き出したのですが、気のせいか、それから数日の間はハクの態度がどこかよそよそしく、もしかしたら最下位のポジションを譲ろうと目論んでいたのではないかなと思うのです。
きっとハクちゃんは、自分がわたしを倒した、と勝手に脳内変換していたのかもしれません。
動物たちとの暮らしは可愛い!愛おしい!だけじゃぁ身が持ちません!
こちらのちょっとした行為でこれまでの関係性は簡単に変わる可能性もある。
常にウマコたちにとって頼れる存在であるにはどうあればいいのか。
これがわたしにとっては永遠の課題なのです。
結局いつの間にか私とハクは、いつもの関係性に戻りましたが、ただ、最近ふとこの日の出来事を思い出すとどうにもげせないことがあるのです。
それはビバのこと。
その後も態度の変わらなかったビバは、やはりわたしのことを下に見ているのかも、とそちらの方が気になって仕方がないのでした。


