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馬のお手入れ道具
欠かせない馬のお手入れの一つがブラッシングですが、ブラシにも種類があり、密集している馬の毛をかき分けてフケを掃き落とすものや、毛艶を出すものなど用途によって使い分けます。
そして、それらの道具についた毛を落とすのに使うのが「カナグシ」です。
その名の通り金属でできているためかたく、先の尖った櫛が付いていて、試しに手のひらをそれで擦ってみると結構痛い。。。
そんなカナグシでのブラッシング大好きなシルちゃん。
毛の汚れがひどい場合にはカナグシを使う事もあるらしいのですが、シルちゃんは結構な力を入れないとご満足いただけません。
ただしカナグシが好きなのは彼女だけ。
敏感で繊細なビバは背中を仰け反らして嫌がり、ハクちゃんもいや〜な顔をします。
さて、シルちゃんが好きなお手入れ道具は他にもあります。
それは金属製の熊手です。
この細い爪で思い切りおしりを掻けと催促してきます。
掻いてあげると鼻と口をひくつかせて喜ぶのですが、なんだか変態プレイをしているようでこちらとしては居心地が悪い思いがするのでした。
ボスに代わっておしおきよ!
いつの頃からか、ビバはボスが誰かを叱ると自分も叱るようになりました。
誰にとってもなんのいいこともないこの悪癖。
それでもビバだけは、ボスが怒ってるから自分が正さなきゃ、と躍起になって叱られている対象を自分も叱りに行くのです。
もっともわかりやすいのが歩いているとき。
ボスがチラッとでも誰かのことを
「遅いよー」
と言おうものなら、至近距離にある場合鼻で小突きにいきます。
なので、ボスとビバ、わたしとシル、ハクのセットにして、なるべくビバと他のコたちは離すようにするのです。
先日、いつものように厩舎に戻る際、それぞれのロープを外した時のことです。
先にハクちゃんを離し、続いてシルを離したのです。
でもシルは相変わらずのんびりとした速度でタラタラと歩いていたので、後ろからビバを離したボスが、早く行くようシルに声をかけたのです。
それでもあちこちよそ見をしながら歩くシル。
そのまま歩かせておけばいずれ部屋に帰るので放っておけばいいものを、さらにボスが声をかけたのです。
そのときでした。
みたこともない速さでビバが走り出し、あっという間にシルの背後へ。
あまりの恐怖に半分腰が砕けるシル。
容赦なくシルのおしりへ振りかざされるビバの頭。
すべてが一瞬の出来事でした。
その直後、ボスの一喝によってビバはその場を離れましたが、そこには怯えきったシルの姿が。
隣に付き添いおしりにそっと手をやると、噛まれた形跡は一切なく、その代わりに大量のヨダレが付着していたのです。
そうなんです。
ビバは噛んだり蹴ったりしてシルを叱ろうとしたのではなく、全力で押してあげようとしたのでした。
最後の3行はほぼ妄想ですが、ビバがボスに代わって成敗しようしているのは間違いありません。
この先も、シルとハクちゃんはその犠牲者になるかと思うと、先が思いやられるのでした。